March 21, 2012

 先日の『監督失格』の衝撃からなかなか立ち直れず、ブログを書いたあとも情緒不安定で、賞味期限がやばい肉とか料理しつつ、「お、おおおー」とフライパンを片手に泣き崩れること数回(笑)。あんまり泣いた泣いたって書くと逆に安っぽくなりそうでイヤなんですが、こんなに後を引く映画もなかなかない。

 なんでこんなに泣きたくなるのかと考えてみて、いろいろな要素はありますが、将来訪れる大切な人の死に直面するのが怖くなって涙が出たというのが一番の理由かと。

 この映画には、主演女優の林由美香が一人暮らししてるマンションで事故死し、数日経って発見されたときの映像がそのまま出てきます。撮影の仕事の件で訪れた平野監督とスタッフの持っていたカメラで、偶然おさめられたそうです。もちろん、再現じゃないよ。この映画はドキュメンタリーで、実際の映像が使われてます。
 数年前に話題になった無縁死に似てるけど、彼女は親兄弟も恋人もいて、無縁じゃなかった。彼女の死体を見つけた母親の由美香ママ、元恋人で仕事相手の平野監督の姿が固定カメラの映像でたんたんと流されます。

 ここで娘の死体を見て「なんでこんなことに」と泣き叫ぶ由美香ママや、別れた後も彼女を愛した元恋人たちの悲しい姿が将来の自分に見えたのかな。オイラもいずれこういう風に一人で残されて、大切な人の死を受け入れる悲しさや恐怖と対面することになるのだと思ったら、つらくて怖くて涙がとまらなくなったんだろうなあ。
 もうこんな歳だからそういう状況もうっすらと想像してたけれども、残されて苦しむ人々の姿を目の当たりにしたら、イヤというほど実感してしまった。まー、オイラが先に死ぬかもしれないんだけど、普通に寿命とか考えるとオイラは残されるほうだから。
 思わず、「もう、絶対にケンカしない! ずっと仲良くする!」と、誓ってしまうのであった。

 単に事故死の発見現場の映像が出てくるってことだけがスゴイわけじゃなく、映画がトータルで心を揺さぶる演出がされていたんです。演出ってのはヤラセとかじゃなくて、膨大な量のビデオ素材から効果的な素材を選んで切り出し、効果的に構成するという意味ね。ドキュメンタリーの編集ってこういうことなんだーと実感した。リアルでなまなましい編集だった。(オイラはまだパンフレットを読んでないんだけど、そこにはやはり構成に苦しんだと書いてあったよ、となをさんより)

 リアルっていうと、ガンモと腰痛ベルトが本当にリアルだった!
 ガンモというのは前のブログでも書いたけど、林由美香が飼っていた犬の名前です。こいつの存在が生き物の命と死のあっけなさをありありと現していた。でも、こいつが映ってたのは偶然なんですよね……リアルすぎてツラかった。
 腰痛ベルトに付いてはネタバレ度が高いので詳細は書かないけど、あの腰痛ベルトは残された者のみっともなさを強調し、本当に悲しくツラい気持ちにさせられた。これが現実か、と。

 あと、一応断っておくと、遺体は映らないので、そういう意味でショッキングではありません。グロ耐性無い人でも大丈夫です。でも、発見した人たちの姿はそれよりもずっとショッキングだけども。

 上映劇場で先行発売されてたDVDを買う気が起きなかったのは、やっぱり怖かったからかな。普通だったら買うんですが、なんだか観た直後はこの映画を手元に置きたくなかった。でも、もうちょっと気持ちが落ち着いて、もう一度観る気になったら買うと思います。

 つことで、ポレポレ東中野で3/23までやってます! 1日1回なので今日も入れるとあと3回の上映だが、行ける人は行っておくとイイよ。

監督失格 DVD2枚組監督失格 DVD2枚組
出演:林由美香
販売元:東宝
(2012-03-23)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


Posted by oomeshi (17:20)

トラックバックURL